いきさつ、

| by Teenage Slang Session /じん |

「ありがとう」。そういう名前の共同ライブ企画をLife Is Water Bandのタケシくんとはじめた。

一緒に何かやろうというのが話の発端だったと思う。彼は乗り気だったし、ボクも乗り気だったのを覚えている。ボクの気持ちとしては、同じように音楽活動していてもジャンルや手法が違うことをやっている我々が何かを一緒にやるというのがいいと思った。少し大袈裟にいうと音楽的というか芸術的な目的やゴールが一緒だと思った。やり方も違ければ目的も違う人々はたくさんいる。ボクを必要としない人も尊敬し合えない人もたくさんいる。好きな人がいたとしても周りがそれを許さないという状況だってある。彼はそんなボクの環境・心情の中で善人であり尊敬出来るが、いい意味でも悪い意味でも多少の危険性を持ったちょっぴりワイルドで、行き先未定ながら一緒に飛び込んでみるのも悪くないと思わせてくれた人だった。なぜかといえば、そもそもの彼の音楽が好きだったからだと思う。彼の佇まいが好きだったんだと思う。

「ありがとう」という企画名を思いついたのはタケシくんだ。場所は新宿。ボクがレコードをよく買いに行く西新宿のレコード屋のすぐ隣の飲み屋で決まった。どうしてそうなったかはボクはもはや忘れた。企画の話をたわいも無い話も織り交ぜながら酒盛りして進めた。「ありがとう」って名前が出たら二人とも笑いあった。結構な盛り上がり方でワクワクしながら笑い合いながらすぐに企画のアイデア満載になっていった。そうしていると調理場で働いていたアジア系のおばちゃんが間違えて電気を消してしまって調理場が一瞬暗くなって、ボクがとっさにハッピーバースデーを歌って、おばちゃんが笑って、周りの人も少しクスっとやって、ボクも嬉しくなった。こんな楽しくなる事を話し合って、アイデアを出し合っている時に、お茶目な事故が起きて出来た企画。きっと楽しくなるんだろうなぁ、と直感的に思った。

それからしょんべん横丁で酒の味が分からなくなったのをいいことに飲みつづけて、終電ギリギリまでタケシくんを付き合わせちゃって、お金も時間もだいぶ使わせちゃって悪いなと思った。帰る時にはボクもベロンベロンだった。帰りは覚えてない。帰ってきて、祖父の写真ともう死んでしまった犬の写真と神社のお札に手を合わせて、「悪いな」じゃなく、せっかくだから言ってみようと思って「ありがとう」って声に出して言った。つづく…